先日、国際合気道連盟(IAF)から、韓国・忠州市で開催の「2019 World Martial Arts Masterships」において、合気道のエキスパートチームとして参加を依頼されました。
当イベントでは、トーナメント、国際カンファレンスおよびシンポジウム、文化的パフォーマンスなどが行われました。主な目的は、世界で最も重要な武道集会の1つになることで、2019年の名誉会長は、前国連事務総長の潘基文氏が務めました。
2019年Chungju World Martial Art Mastershipsの名誉会長として歓迎スピーチを披露する潘基文氏
忠州市では、100カ国から20種目を代表する4,000人のアスリートを迎え、IAFは国際スポーツ連盟のメンバーとして、IAFの上級評議員の一人であるフランス出身のクリスチャン・ティシエ師範の指導のもと、デモンストレーションを行い、特別セミナーに参加するために代表者を派遣するよう招待されました。その他のIAF代表団は、各国連盟から任命された2段から7段までの35名の練習生で構成されました。
参加したIAF関係者と練習生たち
金浦国際空港で出迎えられ、合気道家全員が週末に滞在するボフンレクリエーションセンターまで車で移動しました。この貴重な機会に旧友と再会し、また新しい友人を作ることができました。夜は、韓国合気道連盟の主催で近くのホテルにて歓迎会が開かれました。韓国合気道連盟役員の方々は、週末の間私たちと主催者の間を取り持ち、言葉の壁があるにもかかわらず、私たちが快適に過ごせるよう尽力していただきました。
宿泊先のボフンレクリエーションセンター
ほぼフルタイムでサポートして頂いた韓国合気道連盟の理事であるナク・ジョン・ヨン氏、英訳のほとんどを担当頂いたソン・ジュファン氏にこの場を借りて厚く感謝申し上げます。
ミハリ・ドブロカ氏、ギヨーム・エラール氏、ソン・ジュファン氏
日韓関係が悪化している時期の開催ということもあり、このイベントは特別な意味がありました。IAFの井沢会長は、ウェルカムパーティーのスピーチで、この問題を取り上げこのような言葉を語っています:
皆さんは合気道の代表として、演武やセミナーに参加することになります。日本の伝統を受け継ぐという韓国人練習生の立場は、今、決して楽なものではありません。だからこそ、この機会に彼らを全力で応援して、指導してあげてください。
イベントの公式スローガンは「時代を超えて世界をつなぐ」と正にその通りの言葉だったと言えるでしょう。合気道のような平和的で非競争的な芸術は、このような厳しい状況において特に重要なものであると私たちは皆感じていました。
歓迎のあいさつをする井沢敬氏
翌日は、朝早くから公民館の道場で演武の稽古をしました。IAFからは、井沢敬会長、ヴィルコ・ヴリースマン事務局長、ドリン・マルキス監督委員をはじめとする役員陣が参加。
クリスチャン・ティシエ師範は、技術指導のために来韓しました。デモンストレーションプログラムは、6つのパートで構成され、まず韓国合気道連盟のユン・デヒョン会長指揮のもと、同連盟の会員が演武を行いました。その後、IAFの代表者による基本技、応用技、武器術の演武、そしてエキスパートによる個人演武、最後にクリスチャン・ティシエ師範による演武が行われました。
生徒たちと一緒にデモンストレーションを行った韓国連盟のテクニカルディレクターユン・デヒョン先生
その日まずしなければならなかったのは、 誰が何のデモンストレーションをし、誰を受けとするのかでした。私たちは、まだ誰とペアになるのか考えていなかったのです。
デモンストレーションのチーム分けをするクリスチャン・ティシエ氏とドリン・マルキ氏
私の主な受けは、横浜合気道場指導員のミハイル・ドブロカ氏。また、ベルギー出身のアン・クレア・ヴェルサイユ氏、ルーマニア出身のユリアン・ペルペリチ氏という初対面の人たちとも組むことになりました。プログラムの規模が大きく、準備期間も限られていたため、お互いに練習する時間は非常に限定的でした。そのため、デモンストレーションでは少し緊張しましたが、協力し合い、お互いを発見する素晴らしい機会にもなりました。合気道とは、コミュニケーションと相互理解を確立することでもあり、私たちは正にその精神を実践したのです。
朝のデモンストレーション準備
朝の準備が終わると、車で建国大学校の体育館に移動し、クリスチャン・ティシエ師範による2時間のセミナーが行われました。ここでは韓国の合気道家と一緒に稽古をする機会があり、彼らの技術的な熟練度と稽古への取り組み方には本当に感心しました。これは、私が参加したセミナーの中でも、間違いなく最高のものの一つだと言えるでしょう。
忠州にて指導するクリスチャン・ティシエ師範(受け:ギヨーム・エラール氏)
セミナー終了後、速やかにレクリエーションセンターに戻り、軽い夕食の後、ベストコンディションを保つために早めに就寝。翌日は朝食を済ませ、再び建国大学校体育館に向かいました。ドリン・マルキス氏が効率的なスケジュールを用意してくれており、皆がお互いを気遣い、励まし合う姿はとても素敵な光景でした。全員が協力的で、それぞれのデモンストレーションはとてもスムーズに進行。皆がチームの一員であり、合気道のような武道の修練につながる個人的なインスピレーションを越えて、グループワークの感覚、そして究極的には自分よりも大きなものに対する努力があるのだと実感しました。
ファブリス・クロワゼ氏(受け:ミハリ・ドブロカ氏)
私の「エキスパート」としての演武は、クリスチャン・ティシエ師範の最後の演武の直前に予定されていました。ティシエ師範は、私がフランスで過ごした幼少時代、テレビでその演武を見たときから、お手本としてきた偉大な方です。師範の前で演武するのはとても緊張しましたが、畳を踏む前に「私は君を信頼しているから、この瞬間を楽しんでくれ」と言われ、大きな自信になりました。
ミハイル・ドブロカ氏、ユリアン・ペルペリチ氏との最終デモンストレーション
韓国での最後の夜、部屋に戻ってから今回のイベントについて振り返りました。私たちは、経験も様々で、バックグラウンドも多様な男女の少人数グループでした。皆が合気道稽古の素晴らしい一幕を見せることができましたが、場合によっては、初心者と共に一貫性のあるものを見せるためにお互いの差異を克服しなければなりませんでした。合気道は、その根底にある原理原則に忠実である限り、スポーツ環境を含め、社会に貢献できるものがあると、私は今までにないほど感じています。
稽古を通じて異文化の絆を深められた
このイベントへの参加を許可してくださった国際合気道連盟様、そしてこのような素晴らしい経験をさせてくださった関係者の皆様、稽古生の皆様にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。